国を救う女、女を救う男 [本のイケメン もしくはイケメンの本]
佐藤賢一の小説が好きです。
フランスの歴史に題材を得た佐藤賢一の作品は、ジャンヌ・ダルクや、ルイ12世と王妃ジャンヌといった実在の人物が登場する一方で、ダルタニャンやシラノ・ド・ベルジュラック等のフィクションキャラも多数登場します。そこに、佐藤賢一オリジナルのキャラクターも加わって、史実と創作の入り混じる、セミファンタジーなフランスを作り上げています。
「史実として明らかなコト以外は好きに創作していい」という歴史小説の特徴が、最大限に活かされているのです。
そして何より、主役格の男キャラクターが、これでもかというくらいに男くさいのには感動します。
だいたいアメリカの映画なんかで“おフランス野郎”と言えば、ひ弱で厭味でキザったらしいと相場が決まっていますが、そのイメージがイッキに払拭されます。
中でも読み応えがあるのは『傭兵ピエール』(集英社)。ジャンヌ・ダルクと同じ戦争を闘った、アウトローな漢(おとこ)の話です。
上・下巻。
粗野で乱暴でなかば強盗団な傭兵隊を率いる、これまた恐ろしげな男。
その分強くて逞しくて精力に溢れ、一方でどこか人間的で、たまにひどく女に優しくて、平時にはむしろヒョウキンなくらいで、よく見るとある意味少年っぽくて、なぜかソコハカとなく高貴。
そんな一介の戦争屋が、ひょんなことからジャンヌ・ダルクの信頼を得て...というストーリーですが、聖女を助けるカッコイイ騎士か王子様、といったキレイなヒーローものではありません。
ヒトとヒトが、強烈に命をやり取りする物語。 言うなれば、血と精液の臭い。
というわけで当アソシエーションでは、この小説のテーマ曲を、B'zの『ピエロ』に勝手に決定いたしました。
無法者のピエール、ヒロインのジャンヌ、歴史上の人物でもある変態軍人のジル・ド・レ...
歴史の流れに翻弄されるようでいて、歴史の流れに挑むようでもある、眩しいようなキャラクター像が目の前に現れてまいります。
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